菊池博美さん
(有限会社ケアプラン事務所きくち代表・ホワイトボード・ミーティング®︎認定講師)
四季折々の自然の豊かさを求めて、多くの観光客が訪れる佐渡島。この島で育ち、この島を愛し、日々、高齢者への福祉サービス提供に奮闘する菊池博美さんが「有限会社ケアプラン事務所きくち」でホワイトボード・ミーティング®︎の気軽な勉強会をスタートしたのは、2017年5月のことでした。新潟県佐渡市は6人の認定講師が活動し、ホワイトボード・ミーティング®︎に取り組む人の輪が、少しずつ広がっています。
ホスピタリティあふれる「気軽な勉強会」
土曜日の午後。定員6人の小さな「気軽な勉強会」は、いつもワイワイ賑やかに開催されます。ホワイトボードに向かう真剣な眼差し。笑顔の交流。参加者は、佐渡市内の福祉サービスや教育に取り組む人が中心です。「ホワイトボード・ミーティング®︎を学び、話しあう度にドンドン気づきが生まれます」と、菊池さん。「ひとりの学びが、全体の学びへと変化していくのが、みなさんの主体的な言葉や表情など、からだ全体から伝わってきます」。
毎回、参加される方、久しぶりに来られる方。海を越えての参加もあり、定員を超える時には午前、午後2回の開催になる日もあります。「参加者が増えると嬉しいです。でも、それをめざしているわけでもないんです。参加された方が、来たときよりもちょっと心が温まり、また明日から、もう少し頑張れるかもと思えるきっかけになればいい」。ひとり一人、確実に、ホワイトボード・ミーティング®︎を届けたい。そのホスピタリティは「菊池温泉」と呼ばれています。
感覚的思考から、論理的思考へ
ホワイトボード・ミーティング®︎との出会いは友人に誘われて参加した医療・福祉セミナーでした。「実は東京観光がメインだった」と笑顔で振り返る菊池さんだが、ホワイトボード・ミーティング®の基本的な考え方「心の体力」と「愛情確認行動」の説明を聞いたとき「自分でも持て余す、コントロールしにくい自分の無意識の行動の意味がわかったんです。その奥にある自分の思いにも気づき、衝撃でした」と、話します。「経験や勘といった感覚で動いていた行動に、ホワイトボード・ミーティング®︎の論理的思考がくっついて言語化ができ、自分が楽になれた瞬間でした」。ここから少しずつ、菊池さんのチャレンジがスタートします。
初めてホワイトボード・ミーティング®︎に取り組んだのは、娘さんの進路についてでした。「それまでの私は娘を思うがゆえに、自分の意見を強く言ってしまっていたんです。しかし娘の心には彼女なりの思いがあるから、それに気づけばきっと自分で答えが出せると思い、ふたりでひたすら定例進捗会議を繰り返しました」。しばらくすると、娘さんが「おかあさん、私、自分の進みたい道が見えてきた」と、晴れやかな笑顔に。「やっぱり人は、もともと意志を持っている。それを表現できる環境づくりが、ファシリテーターの役割だ」と実感しました。
仲間と共に。佐渡からスタート
保健師、看護師、居宅支援事業所などを経てケアマネジャーとして独立。現在は、仕事の面談でホワイトボード・ミーティング®︎をフル活用しています。「上手に話を聞くと、ご本人やご家族が上手に決めることができる」と実感。大きな困難が伴って、自分の感情が巻き込まれそうになる時は「ホワイトボードケース会議をすると、自分と相手をメタな視野で見つめられます」。「認定講師になり、教える側になってテキスト(※)に書いてある深さにも気づきました」。医療や福祉にとどまらず、人と人がつながってエンパワーされることをお手伝いできるポジションでいたい。仲間と共に佐渡からスタート。菊池さんの温かいチャレンジは始まったばかりです。
※ホワイトボード・ミーティング®︎ベーシック(3級)公式テキスト(株式会社ひとまち)