【記事】つながる事例検討会の歩み(大阪・介護)

ホワイトボードケース会議で
ケアマネジメント力向上をめざす

 

〜つながる事例検討会の歩み〜

諸外国に例をみないスピードで高齢化が進む日本。厚生労働省は可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けるよう地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。その要となる役割を担うのが介護支援専門員(ケアマネジャー)です。大阪府介護支援専門員協会堺市中区支部(以下、同支部)では、平成28年度にケアマネジャーの力量形成と多職種連携にホワイトボードケース会議を活用し、研修や実践を続けてきました。

ホワイトボード・ミーティング®との出会い

「社会福祉の研修や会議ではグループワークの手法がよく使われます。でも、ファシリテーターをお願いしますと言われても、ちゃんと学んだ経験は意外とないんです」と同支部で活動する牧野雄市さんは語ります。だから「意見の引き出し役だとわかっていても具体的な進め方がわからず、つい自分が話してしまいます」。そんな体験を誰もが繰り返してきました。

しかし、高齢者に充実したケアをするためには、会議での情報共有が肝心です。特にケアマネジャーは、ご本人や家族、地域の様子など包括的な情報を把握する必要があり、ファシリテーション力が必須。「見えない部分を作らないために『会議の可視化』でホームページを検索して辿りついたのがホワイトボード・ミーティング®でした」。

当事者への理解が進み、なおかつ多忙な職員に負担感が少ない会議手法を求めてホワイトボードケース会議を体験した時に「これ、できそうやん」となり、協会員でセミナーを受講しながら練習を重ねました。「この方法だと会議が楽しくなる」が、牧野さんの第1印象でした。

多職種連携を促進するホワイトボードケース会議

第16回近畿ブロック研究大会(一般社団法人 日本介護支援専門員協会)で実践報告同支部では3年前から「自主勉強会」を始めています。新人が学ぶ「わかば研修会」と3年以上のケケアマネジャーが学ぶ「よつば研修会」の2本立ての開催です。平成28年度は、よつば研修会で2回のホワイトボードケース会議による事例検討会を開催。ケアマネジャー以外にもリハビリスタッフや訪問看護ステーションのナース、ヘルパーなど多職種のメンバーが集まりました。

本来、ホワイトボードケース会議のファシリテーターは、意見を聞きながら書くのが基本です。しかし、同支部では、ファシリテーターのハードルを下げるために「聞き役」「書き役」をわけて進行。実際にやってみると、発散(情報共有)、収束(アセスメント)、活用(支援策と役割分担)のプロセスに、知らず、知らずのうちに参加者が前のめりで、意欲的になる姿が印象的でした。

「途中から参加しても書いてあるからわかりやすいんです」と「書き役」を経験した前岡宏明さん。発散のパートでホワイトボードいっぱいに情報が可視化されているので、話がブレずに進みます。「ここが問題だと思います」「ここは私も共感できます」と参加者はホワイトボードを指しながら発言します。当日は、活発に意見交換ができました。

ファシリテーションスキルのアップをめざして

牧野さんは「ホワイトボードケース会議は、どんな方向の意見も、それが全て具体的な解決に向かうのがいいところです。とはいえ、まだまだ不慣れです。回数を重ねないと本質的な課題整理は難しいと思っています」と現状を分析しています。

例えば、「ホワイトボード・ミーティング®アセスメントスケール」の6番は、言葉や態度の意味を翻訳するパートがあります。この翻訳には経験が必要です。そして7番目の最高の状態を考える時にも、局面の規定ができないと抽象度が増します。また、発散で出た強みを支援計画にいかす時にも練習が必要です。

同支部長の梶山尚也さんは「これからも技術向上と多職種連携をメインに学んでいきたいと思います。地元にはホワイトボード・ミーティング®の気軽な勉強会もあり、障害者支援に携わる方々も取り組んでいます。いずれ連携したい」と、ケアマネジャーのファシリテーター力アップや多職種協働に意欲的です。

 

第16回近畿ブロック研究大会(一般社団法人日本介護支援専門員協会)で実践報告

 

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