【記事】「手放す」「委ねる」から始める生徒指導(第63回)

 

 

 

 

 

 

「手放す」「委ねる」から始める生徒指導

     

逢坂 直子

(徳島県立みなと高等学園)

 

 

 

8年ぶりに生徒指導主事を任されました。見える景色は、明らかに違っています。ホワイトボード・ミーティング®を学んで、生徒との向き合い方が変わったからです。教室から離れた静かな部屋で、ホワイトボードを使って面談。教員は、訊き出したい内容を我慢し、ひたすら聴きながら書く。生徒を指導したくなる教員気質を、まずは手放す。「この生徒は何に悩み、どんな支援があればこの問題を超えていけるのか」。そうアセスメントしながら対話を続けると、構えていた生徒の顔も和らぎ始めます。「そろそろ指導的な介入が必要かな」と、心揺さぶられる時もありますが、「どうしたい? どうなったらいいと思う?」と青ペンを持つ頃には、虚勢を張っていた生徒が一気に素顔に戻り、「本当はね…」と本音を語ってくれるように。「教員が困っている子は、本人が困っている」を体現する瞬間です。生徒自身が行動変容していく生徒指導のためには、教員気質を「手放し」、ファシリテーションの技術を使って「委ねて」みることが必要です。本校の離れた静かな部屋からは、生徒と教員の静かな対話が、今日も聞こえています。

(認定講師リレーエッセイ第63回 2022年9月7日)

 

ホワイトボードのある、静かな部屋で